2022年09月30日
中国はここ10年、世界の風車の約半数を製造・建設してきています。
以前は欧州風車メーカ・設計コンサルから図面を買って量産する「製造」に特化した活動が主でしたが、最近は先端技術分野にも進出を始めています。
2019年にはEUと超電導発電機風車を建造、2021年以降は浮体式洋上風力開発も始めています。
１. MingyangがNezzy2浮体式洋上風車(8.3MW×2)を建造中
Nezzy2はドイツの設計コンサルAerodyn社が開発したセミサブ式の浮体式風車です。
以下のように通常とは異なる風車技術の集合体です。
・1浮体に２つのロータを搭載
・ロータは風下側に配置（ダウンウィンド）
・V字型の鋼製タワーの左右頂点をケーブルで繋ぐ
・浮体全体で風向追従（ヨー制御）
・浮体はコンクリート製
まず2020年にドイツのEnBW社がバルト海で1/10モデルを2年間試験しました。
次に中国風車メーカのMingyang(明陽)社が、MySE8.3-180風車をダウンウィンドに改造したロータを2組搭載したプロトタイプを建造。
これを2022年末～23年初に中国南海岸の水深40mの試験サイトに設置する予定です。
中国の実機レベルの浮体式洋上風車としては3台目です。
更にスウェーデン Hexicon 社の英国沖ケルト海Twin Hub 試験サイト（32MW)の優先サプライヤーにも選定されています。
2020年にドイツのEnBW社がバルト海で1/10モデルを2年間試験
16.6MW“双机头”海上风机，即将在中国面世! （中国語。写真あり）
2022年9月8日 中国電力網
http://mm.chinapower.com.cn/flfd/fjzd/20220908/166273.html
MingYang Turbines to Spin on Hexicon's Floating Offshore Wind Project
2022年9 月 22 日 offshoreWIND.biz ※英国Cornwall沖 16 kmに設置予定。
２．中国の浮体式洋上風車（1台目と2台目）
1台目は広東省陽江市の陽西 Shapa III 洋上サイトに併設されたセミサブ式浮体式洋上風車（Mingyang製MySE5.5MW）
World's first typhoon-resistant floating offshore wind turbine successfully connects to the grid in China
2021年12月8日 Global Times
https://www.globaltimes.cn/page/202112/1240933.shtml
China’s First Floating Offshore Wind Turbine Rolls Out
2021年7月13日、5月28日 OffshorewindBiz
https://www.offshorewind.biz/2021/07/13/chinas-first-floating-wind-turbine-heads-offshore/
https://www.offshorewind.biz/2021/05/28/chinas-first-floating-offshore-wind-turbine-rolls-out/
2台目は中国広東省広東省茂名市でセミサブ式浮体式洋上風車 Fuyao（CSSC 製 6.2MW）が現地へ曳航
China's first deep-sea floating wind turbine "Fuyao" towed in China's Guangdong
2022年5月30日 Xinhua、OffshorewindBiz、IchongQing （写真あり）
https://english.news.cn/20220530/b9be2b0d97764e84acdaf09958b09aec/c.html
https://www.offshorewind.biz/2022/05/30/cssc-installing-largest-floating-wind-turbine-in-china/
https://www.ichongqing.info/2022/06/15/chinas-first-deep-sea-floating-wind-turbine-heads-offshore/
３／参考. 中国風車メーカEnvision（遠景能源）が超電導発電機を搭載した3.6MW風車を建造
EUのEcoSwing Projectでデンマーク西部の Thyborønで運転開始。
Envision team hails superconducting wind turbine 'world first' test
2019年11月13日 ReCharge
動画
https://www.youtube.com/watch?v=1MLWuO5-uCM
4／参考. アジアの気象風土の研究
・風車の台風対策は、2003年沖縄県宮古島の台風14号による風車大量被災を受けて、NEDOが「日本型風力発電のガイドライン」を策定、2007年に土木学会が「風力発電設備指示構造物設計指針・同解説」を発行して、日本が世界をリードしてきました。これは風車の国際設計標準IEC61400-1 第4版で「Class T (Tropical Cycroon Class)」として結実し、台湾の洋上風力開発等でも活用されています。
・しかし最近のIEC委員会報告によると、台風関連の風況調査でも中国が大量の計測を始めて研究を始めているそうです。風車の落雷対策も世界で研究されています。残念ですが、まだ日本が優位性を持つのは、地震・つなみ対策くらいになりつつあります。@
